明神水産のたたきと切っても切れないのが、「藁」。
「藁焼きたたき」の特徴は、燻製にも似た藁特有の良い香りです。
状態のいい空洞のある藁は、瞬時に800度もの高温に燃え上がり、鰹の表面だけを炙ることができます。
鰹の表面を高温の炎で一気に焼き上げることにより、鰹の旨みを閉じ込めます。中まで熱を通さないことで、鮮度を良い状態のまま維持することもできます。
そして、職人による手焼きの微妙な調節や、藁焼き加工機に通りやすいということから、根元で刈られた長い藁が必要になります。
しかし、状態の良い藁は、年々手に入りにくくなっています。
平地の大きな田んぼでは、稲はコンバインで刈られます。藁はそのままコンバインで細かく粉砕され、そのまま再び田んぼに撒かれます。
そのため藁を求める先は、機械の入りにくい山間の棚田、段々畑になりますが、そこでの稲作は過酷な重労働で、農家さんの高齢化と後継者不足のため年々休耕田が増える一方というのが現状です。
一度、外国から藁を輸入することを試みたことがありますが、輸入された藁はぎゅうぎゅうに押し込まれたため、藁の中空構造が潰れており、勢いよく焼くことができませんでした。
そういった、「貴重で上質」な藁を手に入れるために、秋になると高知の山間を走り回るのが、明神水産の『藁部隊』です。
海のものと山のもの。
「藁部隊」は、藁焼きたたき加工工場の若手スタッフが中心。
毎年、稲刈りの時期になると、あらかじめ契約している農家さんを訪ね、藁を引き取りに行きます。一緒に藁を干したり、束ねる作業を手伝ったりしながら、トラックに藁を山積みして、会社へ戻ります。
藁焼きたたきを作るのに必要な藁の量は、一抱えもある大きな束が、年間で25,000束以上。近年は、ひろめ市場の明神丸などの飲食店舗でも「藁焼き」の人気が高まり、必要な藁の量も増加しています。
現在、契約農家さんは高知県内で約180件。
水も空気もきれいな、山間部の農家さんが中心です。
しかしそれだけに、農作業には過酷な環境であり、「もう今年が最後かもわからんで」という声が、毎年のように聞かれる状態が続いています。今年は藁を確保できても、五年先、十年先はわからない。
海のものと山のもの、どちらが欠けても、この「藁焼きたたき」という商品は成り立たないのです。
そんななか、明神水産自身で藁、お米を作るプロジェクトが動き出します。おそらく全国でも珍しい、水産会社による農業事業の始動です。
明神水産の営業職、事務職など社員総出の田植え風景(2015年5月)
加工工場での藁焼き
飲食店舗での藁焼き実演
高知の山間を走り回る「藁部隊」
仁淀川上流の農家さんと